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【ニッキンオンライン】M&A diary 事例から読み解く成約の要点12「 身近な資料を用いたニーズ喚起とは」

掲載日 2024年3月 1日

4月から12ヶ月にわたり、最新の金融ニュースを配信している日本金融通信社が運営する「ニッキンONLINE」にて、当社の現役M&Aアドバイザーがコラムを執筆をしております。

「M&A diary 事例から読み解く成約の要点」と題して、金融機関様のM&A支援をしている当社の現役M&Aアドバイザーが、M&Aの現場で感じ・経験した事例をご紹介します。

最終回である第12回のテーマは「身近な資料を用いたニーズ喚起とは」 です。

■ニッキンONLINE 当社コラムページ

▼記事全文▼

現役のM&Aアドバイザーが現場で体験したM&Aの事例や、金融機関との取り組みを紹介するシリーズ「M&A diary~事例から読み解く成約の要点~」。最終回は、伊藤耀一M&Aアドバイザーが、身近な資料を用いたニーズ喚起について、地域金融機関との取り組み事例を紹介する。



身近な資料、法人税申告書の別表2 
提携先である金融機関の担当者から「事業承継の話題を持ち出すことが取引先に失礼にあたるのではないかと感じ、声かけできていない」という悩みを聞く機会が度々あります。今回はそういった際に試していただきたい、ヒアリングまでのちょっとしたきっかけづくりを紹介します。

私がお勧めする手法としては、法人税申告書の別表2を用いた声かけです。取引先から出来上がったばかりの決算書を受け入れる時がベストのタイミングかもしれません。

別表2には会社の株主一覧が記載されている為、そこから会社株式の分布状況について把握することが可能です(転記ミス等あるため、正しくは株主名簿を確認する必要があります)。



株式の状況を深掘りし承継支援につなげる
株式分布の現状について困っている会社によくあるケースとしては「代表者は交代しているのに先代が100%保有したままになっている」、「同族間で幅広く分散している」等が挙げられます。別表2から読み取れるそうした状況に対して、今後どう事業承継対策を考えていくのかという素朴な疑問を、担当者の皆さんから取引先の経営者に投げかけてみるのはいかがでしょうか。

過去に私が面談した経営者の皆さんからも「自分が株式を保有していることは知っているが、それ以上のことはよくわかっていない」「顧問税理士から言われるがまま、子供たちへ毎年少しずつ株式を贈与している」「経営者仲間から自社株をまとめた方がいいといわれているが、何をしたらいいのかわからない」 といった声は珍しくありません。別表2を用いた声かけをきっかけに、株式の状況について深掘りすることで、こうした悩みをヒアリングする事ができる可能性は高く、実際に提携先の金融機関では事業承継、ひいてはM&Aの相談につながった事例が数多くあります。

ある金融機関では、一定規模の自己資本がある全ての取引先に対して別表2を用いた声かけを実施したところ、後継者がいない先はもちろん、候補はいるものの株式の承継方法について困っていた先からも相次いで相談を受け、その後の事業承継支援につながったそうです。その際に、事業承継手段としての親族内承継、従業員承継、M&Aのどのタイプを選択するのが望ましいのか、取引先との間で円滑なディスカッションが進められるよう事業承継検討のフローチャートを活用するといいでしょう。

 

名南M&A 伊藤氏

伊藤 耀一 氏 (いとう よういち)
名南M&A株式会社 
情報開発部 金融法人課 ​
M&Aアドバイザー 
大学卒業後、地方銀行に入行。渉外担当として中小企業の支援に従事した後、
2022年1月より名南M&Aに参画。